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 大学に入学してから、必然的にパソコンのワープロソフト「Word」を使わざるをえない状況となった。元々は「ワードプロセッサ」を使っていたため、違和感を覚える場面が多い。ワープロの方が自由度が高く、思うがままに作業が進められる。また日本語変換機能もワープロの方が優れていた。本来パソコンの方が機能的には優れているはずだが、なぜこの程度も出来ないかと、正直疑問を禁じ得ない。その後、ワープロソフト「一太郎」を知り、使いやすさに驚いた。かつて日本語用のワードプロセッサと鎬を削り合っていたこともあり、一太郎の根底には全角を一単位とする日本独特の書式が存在する。一太郎は、日本語ワードプロセッサの直接的な後継とも言えるのではないだろうか。今回このレポートでは一太郎とWordを比較し、特に差異を感じた部分について考察する。
 
<使用ソフト>
・Microsoft Office Word 2003
・一太郎2004
 
<一太郎とWordの差異>
 ・文字数の算出の差異
 現在書いている文章の文字数を数えたいとする。Wordで「文字カウント」を選択した際、まず最初に出るのが「ページ数」であり、「単語数」がそれに続く。「文字数(スペースを含めない)」は三番目の項目となる。単語数が文字数よりも優先される、という表示方法は、いかにもアルファベット表記のままの視点と言えるだろう。欧米では文章の全体量を単語数で把握する。しかし日本では原稿用紙の普及により、全角文字を数える習慣が根強い。
 一太郎の場合、「文章の文字数」を選択すると、全角の総文字数がまず最初に示される。加えて「種類別の文字数」も表示され、「半角英数の単語数」という項目も存在する。アルファベットや漢字が混在する文章を頻繁に書かねばならない文化圏の人間にとって、非常に把握しやすい構成となっている。
 
・ルビの挿入の差異
 日本語独特の書式の一つにルビがある。本来読みにくい漢字に対し「ふりがな」として使用する事が多い。最近の小説等では漢字にそのふりがなと全く異なるルビを当て、文章に二重の含みを持たせる形式も見られる。
 Wordの場合、単語にルビを振るとその行間が不自然に広がる。いかにも無理に「挿入した」という感が否めない。一方、一太郎でふりがなを設定した場合、行間は広がらず自然な形でふりがなが振られる。原稿用紙で升目の横に小さく行が空けてあるように、一太郎ではルビを使うことが最初から想定されている。
 
・縦書きの差異
 日本語は本来縦書きである。縦書きの文章形式を必要とされる場面も多々ある。Wordは縦書きで印刷することは出来ても、編集することは不可能である。横書きの場合と縦書きの場合で文章の印象が違うことも多い。一太郎の場合、縦書きで編集を行なえ、最初から印刷された状態を見ながら作業を進めることが可能である。
 
・漢字変換の差異
 これまでIMEで変換を行なった場合、文節ごとに変換を強いられるため、率直に言って煩わしかった。アルファベット表記において単語ごとに区切る弊害が現れているようにも思う。今回IME2003になって、多少改善はされたようにも思われる。
 
・汎用性の差異
 相手が一太郎ユーザーであるという確証がない限り、添付ファイルはWord形式で送ることが多い。Wordは購入時に最初からOfficeの一部として搭載されているため、送り先で開けないというトラブルの心配がないためである。プログラム上の性能差ではなく、単純なシェアの問題ではあるが、誰もが共有出来るという点において一太郎は大きく水をあけられている。また、個人で使用する際でもOffice内での密接な連携を持つWordは優れている。
 
 
 ・総括
 新しいユーザーはどうしても、Wordを最初から入っているから使う、と言う姿勢になりがちである。しかし、私を含め文書作成の機会の多い人間ほど一太郎を使用している場合が多い。今回の比較検討から、一太郎、Word双方に利点欠点が有ることがわかったが、日本語で文書を作成するのみなら一太郎の方が確実に優れている。にもかかわらず、Wordがシェアを伸ばしているのは汎用性という一点の力であることは明白である。
 消費者の要望が汲み取られていくのは正しい市場においては常識である。双社ともに自社製品の不満点を見直し、ユーザー本位の開発をせねば、明確な発展型を見出せる、文書作成ソフトという便利極まりないツールの真価が発揮される機会を持つことは無いだろう。